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2016年2月11日 (木)

なぜ「掃除?片づけ」が人生に関わるのか-5-


(プレジデントオンライン)

PRESIDENT Online スペシャル 掲載

■TOPIC-5 何でも楽しくするという思想

ここまで、掃除?片づけ本とその関連書籍の系譜を追いながら、どのように掃除?片づけと人生の好転や夢の実現が結びついてきたかをみてきました。TOPIC-1で示した検証のチェックポイントを回収しつつ、これまでの追跡をまとめてみたいと思います。チェックポイントは3点でした。(1)掃除や片づけを自己啓発に結びつける着想のルーツはどこか。(2)掃除?片づけによって人生を変える、夢をかなえる、自分らしさを実現するといった個別の着想はいつ頃、誰によって、どのように示されたのか。(3)掃除?片づけ本と隣接するジャンルの動向は影響しているのか。

まず掃除、つまりきれいにすることに関しては、仏教や神道などの宗教的背景がそもそもあったのですが、1994年あたりから、鍵山秀三郎さんを中心とした修養としての掃除への注目が高まっていきました。バブル崩壊を経て、これからは心の時代だと考える人々が、心を磨く手段としての掃除、社員の人間性を高め企業の業績を上げる手段としての掃除に注目したのだと考えられます。

また、数多ある整理?収納に関する女性向けのハウ?トゥ本のなかから、やはり1990年代中頃に生き方と整理?収納を結びつけるような考えが示され始めます。しかし当時、そのような考えはまだ「気恥かしい」ものとして示されていました。2000年代に入り、そのような気恥かしさではなく、確信をもって、持ち物の整理は人生を変え、夢をかなえ、自らを発見することにつながると主張するアメリカの生活整理本が翻訳刊行されます。このあたりから、家事と人生?夢の結びつきは始まっているようです。

<レブロン13モンスターハートビーツ>ちょうどその頃、辰巳渚さんの『「捨てる!」技術』を端緒として、捨てることを前面に押し出す著作が多く現われていました。やはり同じ頃、「片づけられない女たち」という言葉が同名の著作から広がり、モノを溜めこみ、捨てることのできない人々という一つの社会問題として認知されるようになっていました。そして片づけという言葉はこのような文脈、つまり掃除(きれいにする)とも収納(しまう)とも異なる、「捨てる」ことを決然と行うという文脈で使われていくようになります。また1990年代中頃には、掃除?片づけは風水を通して、緩やかにスピリチュアルな領域と結びつけられてもいました。

このように見てくると、舛田光洋さんの『夢をかなえる「そうじ力」』、小松易さんの『たった1分で人生が変わる片づけの習慣』、近藤麻理恵さんの『人生がときめく片づけの魔法』、クラター?コンサルタントのやましたひでこさんによる『新?片づけ術 断捨離』といった近年の代表的な掃除?片づけ本の発想は、かなりの部分が事前に出揃っていたことになるといえそうです。

■独創でもパクリでもなく

ただ、だからといって私は、近年の著作に独創性がないといいたいわけではありません。TOPIC-1でも示したように、私は自己啓発書(に限らないかもしれませんが)とは「差別化に差別化が重ねられていき、それを俯瞰して見ると、あるいは時を置いてみると自動運動しているように見える」メディアだと考えています。ベストセラーについて、それを天才の独創性だと持ちあげるのでも、あるいは「パクリ」だとこきおろすのでもなく、何を先行する言論から引き継ぎ、何を新たに差異化して提示しているのかを考えるほうが、より私たちが分かることも増えるのではないかと思うのです。

では、近年の著作の何が新しいといえるのでしょうか。まず率直にいえば、まったく新しい「発想」というのは、ほとんどないのではないかと思われます。新奇性を見出せるのは、「組み合わせ方」という水準においてだと私は考えます。たとえば舛田さんでいえば、鍵山さんの時点では自己の修養という文脈で考えられていた掃除の効用から一歩踏み出て、アメリカ発の生活整理術で語られていたような家事による夢の実現というアイデア、『脳内革命』などにもある人智を超えた存在への言及を組み合わせているところにおいて、これまでにない、差異化された著作になっていると考えられます。

近藤さんややましたさんの場合は、これまでの連載で幾度か言及してきた、女性的自己啓発書の文脈への引き込みにおいて新奇性があるように思えます。つまり、日常生活の一コマ(この場合は片づけ)と自己発見、人生の変革、夢の実現を結びつけていくという、この時期さまざまなジャンルで同時多発的に起こっていたムーブメントを取り入れ、片づけを他人ではなく自分の心を大事にするため、自分らしくあるため、自分を好きになるために使おうとするところに新奇性があるように思われます。彼女らの場合は本人のタレント性も大きく関係しているのかもしれませんが、発するメッセージという水準ではこのような結びつけ方の妙に特性があるように思われます。

ただ、組み合わせ方が新奇であることがすなわちベストセラーの条件だと簡単にいえるわけではないとも思います。というのは、小松さんの著作について考えるとき、そのキーポイントになっている、片づけ(捨てること)と人生、自己発見、仕事上の能力を結びつけるというアイデアは、先行する著作と比べて特段に新しいとはどうしても思えない(少なくとも私には)ためです。結局、なぜベストセラーが生まれたのかということの説明は難しく、事後的に解釈することしかできないように思えます。


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